沈黙の××(仮)

中身がマンネリなら、タイトルもマンネリ。とうとうタイトルの一般公募という手に出たスティーヴン・セガールの“沈黙”シリーズ最新作。宣伝がてら軽い気持ちでブクマしたら、はてブが妙に盛り上がっちゃって正直ビックリ。でもこれじゃあ大喜利じゃないか! セガールが求めているのはカッコ良いタイトルなんだよ!! まぁジェネオンの営業さんは喜んでたけど。

スティーヴン・セガール最新作「日本版タイトル」大募集キャンペーン

気を取り直して肝心の本編を紹介。原題は'Driven to Kill'。別れた女房と彼女に押し付けてた一人娘が何者かに襲われ、元マフィアのセガールの怒りが爆発! という“デス・ウィッシュ”系クライムアクションです。娘を演じるのは「ウォッチメン」でDr.マンハッタンの元恋人を演じてたローラ・ナメルで、元女房役は「ドーン・オブ・ザ・デッド」のインナ・コロブキナ。娘の婚約者役に「リ・ジェネシス」のドミトリー・チェボヴェツキー、その父親役に「インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国」のイゴール・ジジキンという、最近のセガール映画としては充実のキャスティング。監督は「雷神」でもセガールと組んだジェフ・F・キングです。

ロシア・マフィアのボスの座を降り、今ではカリフォルニアで犯罪小説家として暮らすルスランに、別れた妻キャサリンから電話が入る。彼女に預けていた一人娘レイニーが結婚するというのだ。しかも結婚相手は、自身はカタギながら父親が現在の組織のボスであるステファン。複雑な気持ちのまま、もう足を踏み入れぬと誓ったかつての縄張に舞い戻ったルスラン。だが、娘との感動の再会も果たした直後、屋敷に賊が押し入り、キャサリンは死亡、レイニーも意識不明の重体に陥って…。

この後は、レイニーの生存を隠したまま、犯人探し&復讐を始めるセガール。そして真犯人ではと疑いつつも“男ならお前も付き合え!”と無理矢理に将来の義理の息子を相棒にしてしまう。この犯人探しの過程は、チェボヴェツキーの超ヘタレ顔を活かし、腰が引けてる男に真の男の魂を注入する「グラン・トリノ」的な展開、と好意的に見ればそういう解釈が出来なくもない。

それから全体のテンポは、これまた好意的に見れば、最近のセガール映画では珍しい、地に足がついたじっくり型。もちろん単にノロいだけとも言えるんだけど、演じるセガールがオヤジなら見てる方もオヤジなワケで、このゆったりしたテンポは正直ありがたかったです。アクションシーンにちょっとしたアイディアがあるのにもちょっと驚きました。

そんな感じで、超凡作だった「雷神」の監督の作品とは思えぬ雰囲気。ただし、捜査と言いつつ実際はセガールが殴ったり蹴ったり手をヒラヒラさせたりするだけだった「雷神」同様、本作でも犯人を探してるはずが単にあちらこちらで大暴れしてるだけというのはどうなのよ? おかげで、ガンショップで、質屋で、ストリップバーで、病院で、雑魚どもの死体の山が! まぁその分、アクションの見栄えが良くなってるからいいのかも知れません。でも、元マフィアのボスという設定を活かすなら、昔のツテをたどって、とか、今のボスに反感を持つかつての部下が…みたいなエピソードをつけてるのが常道だと思うんだけど。

要するに、相変わらず話の膨らみが全く無い、実に真っ当なセガール映画でした。ただ、メインストーリー自体は全くブレが無い分、それなりに最後まで楽しめちゃいますけどね。

最後に、いつも微妙に丈が長い背広姿ばかりのセガールですが、冒頭の舞台がカリフォルニアという事でダルなTシャツ姿を披露。更にロシア・マフィアらしく派手派手なタトゥーまで! この辺はファンなら必見でしょう。あと、娘との再会シーンは、藤谷文子と重ね合わせたのか、今まで見た事も無いくらい情感たっぷりなセガールの演技が見られるゾ!!

※追記。「沈黙の鎮魂歌」に決定しました。