タンカー・アタック

タンカー・アタック [DVD]
9/3レンタルリリース アットエンタテインメント

※冒頭部分

原題は'Танкер 'Танго'' (英題'Tanker 'Tango'')。ロシア製のパニックアクションなんですが、何と監督が「少年、機関車に乗る」のタジキスタン人監督、バフティヤル・フドイナザーロフ! 何故彼がこんなのを撮ったの?!

テロ集団の標的にされたバルト海に浮かぶ海底油田基地。一方、親友に騙されて無一文になった青年実業家のグレコフは、彼に唯一残された老朽化したタンカー、タンゴ号を使って一攫千金の賭けに出る。だがそのタンカーこそがテロ集団の計画の一部だった。馴染みの海軍将校から密輸用の原油を“給油”して貰う為に軍港に立ち寄ったグレコフだったが足止めを喰らう。船員に化けて潜り込んでいたテロリストたちは痺れを切らし、グレコフと彼が港で出逢った美女アンナを乗せたまま、油田基地へ向けて無理矢理出港して…。

この後は定番通りに主人公と恋人が船を止めようとテロリスト相手に奮闘! という流れなんですが、本作の場合そこに至るまで、つまりはタンカーが港に停泊している間のパートが長過ぎる! しかも港でもスリルとサスペンスな展開が…というのならまだしも、やってるのは船員と海軍兵士とのドタバタや、主人公と漁村の娘(コブつき)との恋愛模様、年老いた海軍将校の悲哀みたいなドラマ色の強いシーンばかりなんだから訳判らん。そんなのを延々と見せられるから、テロリストの油田基地破壊計画なんてどうでもよくなってしまう!

そんな感じで酷くバランスの悪い作品でした。そしてそうなった原因は脚本によるものではないかと推察されます。と言うのも、テロリストの計画も、主人公の背景も、タンカーの出港時のあれこれも、主人公と美女との恋のあれこれも、全ての展開が説明不足なんだもの。おかげで一瞬何が起こってるのか判らなくなる事が度々。ちょっと考えれば見てるこっちで補完が出来るレベルではあるんですが、これはちょっと酷かったなぁ。

でも、そんな駄脚本を渡されても監督の才能は隠し切れなかった! 前述のドタバタ劇はテンポ良く軽快、ラブシーンも情感たっぷり、アクションシーンは構図に深みがあって迫力満点! という具合なんですよ。逆にいうと一つ一つのシーンが魅力的な分、それを繋ぐ脚本の酷さが目につく事にもなってるんですが。

映像的に良く見えた理由のもう一つは主演俳優たちのルックスの良さ。最近入って来ているロシア製アクションの主役って“お前、どう見ても敵役の方だろッ!”と言いたくなるオッサンばかりですが、本作の主人公はイケメンとまでは言いませんが、それなりにハナがあるタイプで日本人でも納得できる。ヒロインのエカテリーナ・グーセヴァ嬢もかなりの美人だし(但し、脱ぎそうで脱がないので一点減点)。

ひょっとしたら、フドイナザーロフ監督が脚本そっちのけで好き勝手に撮った結果、大幅に尺がオーバーして、製作者がバッサバッサと編集したせいで、こんなバランスの悪い作品になったのかも知れません。そう思いたくなるくらいに、演出と脚本のレベルの差が激しいヘンな作品でした。

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※バフティヤル・フドイナザーロフ監督作