社員無頼 怒号篇、反撃篇@チャンネルNECO

鈴木英夫が1959年に東宝で撮った、源氏鶏太のサラリーマン小説の映画化作品。

一流大学を卒業したものの、その男気から中小企業・柿原工業に就職した小牧雄吉。だが会社は借金に負われ、大阪の大企業・興和工業の資金提供を受ける事に。そして興和工業から派遣されて来た隅田は、着任早々柿原社長を隅に追いやって私利私欲を貪り、あろう事か雄吉の恋人だった美奈を個人秘書に抜擢、金の力で愛人にまでしてしまう。そんな隅田に尻尾を振る社員たちの姿に憤まんやるかたない雄吉は、遂には隅田を殴り、会社を辞めてしまったのだが…。

上原謙演じる隅田の小悪党ぶりもどうかと思いますが、佐原健二演じる主人公も、結局は私怨で動いてるだけ。別に凄く仕事が出来るとか頭が切れるって訳でも無いし、無頼になると決めて逆襲に転じる後編でも悪になりきらないしで、最後まで余り乗れない作品でした。所詮はサラリーマン同士によるスケールの小さな争いでしかないんですよね。鈴木英夫の演出力の確かさだけで見られる出来になった感じ。

主人公にムカつくもう一つの要因は、恋人の白川由美を取られたと思ったら、いきなりコールガールで後に隅田の愛人になる水野久美の部屋に連れ込まれたり、その隣人で実は大阪の財閥の娘の団令子に惚れられたりという、余りに都合の良い(且つ羨ましい)女性関係。これで主人公が安田一平ばりのイイ男だったら納得出来たし、映画も盛り上がったと思うんだけどなぁ。

三ヶ月続いた鈴木英夫特集の感想。腕が確かなのは良く判った。でも語り継がれる様なのは、「その場所に女ありて」と「悪の階段」だけだったなぁ。まぁ二本あれば十分な気もしますが。