SHOCKER ショッカー

SHOCKER ショッカー [DVD]

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原題は'Seed'。人気ゲームを映画化しては世界中のゲームファン、映画ファンから怒号と罵声と嘲笑を浴びてきた我らがウーヴェ・ボルが、久々(「シアトル猟奇殺人捜査」以来?)にオリジナルストーリーで撮った残酷スリラーです。主演はボル映画の常連、マイケル・パレ。「ブラッドレインII」に引き続いてのジョデル・フェルランドちゃんやラルフ・モーラーが共演してます。

6年間に666件もの犯行を重ねた史上最悪の連続殺人犯シードが遂に逮捕される。絶海の孤島に作られた刑務所で電気椅子による死刑執行が行われるが、老朽化した設備のせいで二度の電気ショックを受けてもシードの心臓は動き続けていた。自分の面子を守る為に所長の判断で、シードは生きたまま埋葬されたのだが…。

単純なストーリーでさえマトモに描けないボルがスリラーなんて作れんのかね? と思ってたら、案の定、やっぱり…な出来。

いきなり死刑執行の場面からスタートするものの、そこから回想だかナンだかはっきりしないままシード逮捕の日に遡るという展開、なのはまだ良いんですが、更にいつの話なんだか判らないシーンを随時挿入したり、全く意味の無い会話は延々と続ける代わりにストーリーを進める上で必要な手順を踏まなかったりして、見る者を混乱させるいつものボル節が炸裂!

冒頭、これみよがしに“三度の電気ショックに耐えた者は自由の身になる”という州法(ホントかよ?!)が披露される事から、殺人鬼シードが死刑を免れ復讐に転じるストーリーなのは明らかなのに、そこに行き着くまでにもう映画は折り返し点を過ぎちゃってる始末!

主人公シードは、殺人鬼ならこれだろうと言わんばかりにズタ袋みたいなマスクを着用。これも死刑執行時に被せられる袋がそのまま…というのは判るんですが、何故か逮捕前から着けている、だけならまだしも、何故かムショの中でまで着けてるんだからワケが判らない。

更に言うと、シードはこれまたお約束で屈強なガタイ。でも、幅は結構あるものの、正直チビ過ぎるんですよねぇ。このせいで巨体のラルフ・モーラーに襲い掛かるシーンは迫力が無いし、孤島から泳いで脱出するシーンなんかコントにしか見えない。

コントと言えば、シードが縛り付けたオバさんを手斧で弄ぶ様に殺す場面は、常識的には長過ぎてダラけるはずのボル流の撮り方が逆に幸い、何ともオカしいやらおぞましいやら、変な気分をもよおす効果をあげているから、ちょっとだけ必見かも知れません。

結局のところ、何も知らずに見れば怒り出すのが普通の駄作、凡作だと思います。ただボルという監督を知ってから見れば、色んな意味で楽しめるんじゃないでしょうか。

最後に、マスクを被った殺人鬼つながりでこれも紹介。

ビハインド・ザ・マスク [DVD]

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※「ビハインド・ザ・マスク」の予告編

原題も'Behind the Mask The Rise of Leslie Vernon'。町山大将が『アメリカ映画特電』で二年前に紹介していた異色ホラーがようやく日本上陸です。