ディープ・アンダーカバー

原題は'Tortured'。「ピッチブラック」等、普段は脇に回る事の多いコール・ハウザーが主演した潜入捜査官モノです。主演が地味な分(?)、助演陣がローレンス・フィッシュバーンジェームズ・クロムウェル、ケビン・ポラックと充実。男クサい面子の中で、「エージェント・ゾーハン」ではアダム・サンドラーの相手役を務めたエマニュエル・シュリーキーが花を添えてます。

消えた組織の金の行方を探る為に、担当会計士グリーンを監禁し拷問を続けるジミー。だがジミーとは仮の名で、その正体は正体不明の組織のボス・ジギーを追う為に潜入したFBI捜査官ケビンだった。FBI長官の父に反抗する様に危険な道をすすんで選んできたケビン。悪の世界に染まった彼の執拗な拷問は捜査の為か、それとも…?!

潜入捜査官モノの定番通りに、正義と悪の境目で揺れる主人公の姿を追うという作品。ボスの正体は? というミステリー要素はありますが、それは役者の格からして最初からどっちかしかないワケだから…。

原題から判ると思いますが、冒頭からいきなり始まる拷問シーンが大きな見どころになってます。ヤラれるのが普段は強面なフィッシュバーンというのも意外性があってイイ。描写の方も最初からかなりエグくて、ダメなヒトはこの時点でダメかも知れません。

で、この拷問の中で主人公とフィッシュバーンによる熾烈な心理戦が展開する…と思うじゃないですか? ところがこのスタッフ、何を思ったのか主人公に拷問部屋から出たり入ったりを繰り返させる。そして部屋から出てる間に、潜入当初の話や、妻との軋轢、父へのコンプレックスみたいなのを描いていく構成にしてるんですね。おそらくは拷問だけでなく、クライムドラマとしての色んな要素を盛り込みたいと欲をかいての事でしょうが、これが失敗。拷問の一つ一つは凄惨でもじっくりと描いてないから印象が薄くなってるし、話全体の勢いも削いじゃってるんですよ。

また、時系列の並べ方も相当にヘタくそ。拷問部屋を軸にした現在進行形のシーンと回想シーンだけならまだしも、そこに主人公が精神科医に吐露するエピソード(これが今現在なのか回想なのかよく判らない)まで挿入していくという複雑な構成。お陰で主人公が狂気に堕ちていく過程が上手く伝わって来ない。

役者が充実してる分、クライムドラマとしての雰囲気は結構良いだけに、構成のダメさ加減が非常に勿体無い作品でした。