マーキュリーマン

マーキュリーマン [DVD]
9/26レンタルリリース アートポート
 まず、そのデザインや動きから“俺たちも「スパイダーマン」みたいなヒーローアクションが作りてぇぜ!”てな感じで製作されたのがバレバレではありますが、基本設定に太陽の護符と月の護符の争奪戦という伝奇ホラー的な要素を組み込んだのがアジア映画らしくて良い感じ。ちなみに護符と言ってもお札じゃなくて、超パワーを秘めた隕石の欠片という設定。そして、この欠片が“水銀”状になって主人公の体に融合して誕生したから“マーキュリーマン”なワケです(要するに水星とはナンの関係も無し)。
他にもタイ映画ならではの描写が多数。例えばマーキュリーマンの活躍は強盗や強姦魔を懲らしめるだけではなく、暴れ象を捕まえたり、街の花売り幼女を救ったりみたいな。まぁ一番タイらしいのは、主人公の“妹”役を「ビューティフル ボーイ APS-91[DVD]」こと、元・性転換ムエタイボクサーのパリンヤー・ジャルーンポンが演じてる事かな(w。
ヒーロー映画としては、完全無欠の存在ではなく、ちゃんと弱点が提示される辺りは‘判ってるなぁ’と感心。そして、手に入れた超パワーを制御する為に修行するだけでも特撮ヒーローっぽくて嬉しい所なんですが、その相手をしてくれるのがダイバダッタみたいなムサい爺様じゃなくて、チベットからやって来た美少女尼僧(もちろんクンフー使いだゾ)なのも素晴らしい。
そして生身の格闘アクションが最高なのは言わずもがな。ちゃんと尼僧と敵の女戦士との女闘美ファイトもアリ!
その美少女師範代から‘興奮すると体内の護符からとてつもない熱が放出される’と聞いた主人公が、それを試す為に取り出すのが米版ペントハウスという、素晴らしいボンクラシーンまで登場! 更には、案の定着ていた服が燃えちゃった主人公(手にはエロ本)が真っ裸になった所をお母さんに見られてしまって、あぁ勘違いという最高のコンボまで発生!!
その一方で、敵の正体がイスラム教原理主義の反米テロ組織だったり、チベットのゲリラ集団が登場したりと、妙に社会派な要素まで混入! しかも単純な悪者として描くんじゃなく、彼らなりの正義や覚悟まできちんと描いて見せるんだから凄いというかナンというか。それでいて、何故かウランプルトニウムの性質まである護符を使った核ミサイルを作るのはともかく、その扱いが妙にぞんざいなのは如何なモノか。この辺の描写に神経質になるのは世界で日本人だけなんですかねぇ。
そんな感じで、硬軟様々な要素が作品のバランスを崩す事無く詰め込まれた、素晴らしい娯楽映画だと思います。難を言えば、クライマックスが意外に尻すぼみ気味なのと、CGのレベルが若干見劣りするトコくらい。ただそのCGにしても、一枚絵としての綺麗さよりもモーションの方を優先させてるから好感が持てます。少なくとも「カンフーくん」のソレよりかは遥かにマシだと断言!