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原作の『ゴールデン・マン』は十数年前にサンリオSF文庫で読んだっきり。でも二分後の未来を予知、しかも自分の身に降り掛かる事だけしか判らないという、かなり縛りのきつい設定は、逆に志高い表現者なら“どう料理してやろうか”と腕ぶす所だと思い、ほんのちょっとだけ期待してました。

ところが実際に映画化に当たったのは、脚色が「ゴースト・ハンターズ」「トータル・リコール」のゲイリー・ゴールドマン、監督も豪快さが売りのリー・タマホリという、ロジカルな緻密さや繊細さとは無縁のコンビ。しかも主演がニコラス・ケイジジェシカ・ビールという、実にアメリカーンで大味な二人だから余計大変な事に。

とにかく、二分後の未来の予知能力者の筈が、かなり早い段階で脳内シミュレーションの正確な人(失敗しそうになったら巻き戻し能力アリ)、あるいは単に勘の鋭い人程度にしか見えなくなるのはどうなの? しかも話が進むにつれて、物語のベースになってる筈の設定がどんどん適当になっていくのも酷い。

キャスト的にも、唯一物語のロジカルさを支えていると思われたジュリアン・ムーアまで、無理矢理目玉をひん剥かれてるケイジの前でタバコをプカーっと吹かすシーンのせいで大崩壊しちゃうし。せっかく出てくれたピーター・フォークにはちっとも見せ場が無いし。

そんなこんなで、映画の中のキャラクターも、映画を作ってる方も、一体何がしたいのか理解に苦しむ雑な作品だったんですが、元々のネタとスタッフ&キャストの余りのギャップが、逆に妙なおかしさを生んで、途中からちょっと楽しくなってしまいました。

例えば、予知能力があるから銃で狙われても何時も避けてしまうケイジに弾が当たって、スナイパーの方が“当たっちゃったよ!”とびっくりするシーン。そして巨大ピタゴラスイッチを作動させ、そのせいでゴロンゴロンと転がり落ちてくる様々な障害物を除けながら軽快に降りてくるケイジにも笑ったなぁ。終盤に突如登場する“分身の術”は絶対に「NARUTO」の影響下にあると思います。

そんなの馬鹿馬鹿しくもおかしなシーンを見てたら、設定を根底から覆してしまう衝撃のクライマックスもナンだか微笑ましく思えるから不思議。まぁ真面目にストーリーを追っかけてたら絶対に怒ってしまうと思うけど。

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ゴールデン・マン (ハヤカワ文庫 SF テ 1-18 ディック傑作集)

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※原作本